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えみごのメモ

ももクロと杏果

未来の象徴としてのももクロちゃん

先程、一杯のコーヒーを飲み切った。
それから机の上を片付けて、ふと思い出したちいさなことをやっぱり書き残そうと、スマホを開いた。

このコーヒーは先月貰ったものだ。確か五つくらいドリップバッグが入っていて、これが最後のひとつ。
大切な方の葬儀で頂いた香典返しの、最後のひとつだった。

私は久しぶりに誰かを亡くした。いや、親族以外で大事な人を亡くすのは初めてだった。
詳しくは書かないが一時期お世話になった方で、まあなんというか、心から尊敬し、信仰に近い愛を持ってアイドルのように追っかけ回していた方だった。

急死の報せを受けてから、葬儀に出席し、しばらく経つまで...地獄のような日々だった。
もうはっきりとは思い出せないが、あんなに涙が流れ、胸が締め付けられ、ひたすらに辛く悲しく苦しい、というのは初めて味わう感覚だった。
ただひたすら「死」に向き合い、後悔と喪失感と絶望感にもがく日々。
とても自分の好きなことをして楽しむ気などにはなれず、そうすることが故人に申し訳ないと感じて、私はももクロを絶っていた。

その時はちょうど夏休みの終わり頃で、だからちょうど家で破滅していられた。
大学が始まると思うと嫌で嫌で嫌で、このままずっと泣いて閉じこもっていたかった。

新学期の一日目、死んだ目をしながら本当に頑張って大学まで辿り着いた。
誰にも会いたくなかった。あの人を知らない誰とも話をしたくなかった。けれど朝から友人と会わねばならない用事があって、仕方なしに待ち合わせていた。
相手がモノノフだったから、余計に気が重かった。楽しい話などしたくなかった。

なんとなく緊張気味で会い、本来の用事を済ませると、夏休み明けということもあってか「最近どう?」というような言葉を掛けられた。普段はそんなこと言わないのに。
じゃあ言ってしまおうと、「最近」のことをかいつまんで話した。
それを聞いてもらえて、共感して貰えて、なんだか少し気が楽になってしまって。淀んだ空気を変えようと、思わず自分からももクロの話題を振った。

この間の月刊TAKAHASHIのLVが最高だったこと。確かそこから始まって。
前橋当たった!とか、ももクリのBlu-ray早くね?とか、今年のももクリは、とか、今度のLVが、来年のツアーが、アルバムが、今後のあの子が、ああ、ライブ行きたい、早く現場行きたいなー!!!
と、話していて途中で気付いた。
全部、未来の話だと。

ももクロちゃんに意識を向けた途端、未来が楽しみだという感覚を思い出した。
今を犠牲にして過去の思い出に涙するばかりで、未来が見えていなかった。それが供養になると思っていた。いつまでもそうしていなければとうじうじ思っていた。でも。
久々にももクロちゃんのことを考えて、やっぱり元気が出た。気付いたらそんなことを言っていて、
こんな時だからこそでしょ!と返されたらば、そうだね!と明るく答える自分がいた。

ああ、これこそが本来の自分だと思った。
今のももクロちゃんを楽しみ、未来のももクロちゃんにワクワクしながら生きているのが私だった。
本来の自分を捨てて破滅した人生を送ってもあの人に呆れられるだけだろう。

そう気付いたから、どん底から舞い戻れた。前を向けたのだ。


最後のコーヒーを味わいながら、そんなことを思い出していた。

あれから新学期の大学になんとか順応し、徐々に気持ちを落ち着けていき、普通の精神状態に戻った。だから今生きている。
結局ももクロちゃんに救われた。もう何度目かも分からない。

今を全力で生きて未来へ向かっていく彼女達と、一緒になって走る。それがこれまでもこれからも私の核なのだと思う。
あの人を忘れるわけではないのだから、逆にあの人に教わったことを生かすために私はきっちり生きなければならなくて、そのために必要な存在がももクロちゃんなのだ。

なにより、ももクロちゃんは死んでいなくて、同じ世界に生きている。今彼女達に貰えるものはとても尊い、無駄にしてはいけないものなのだ。
いつの日にか別れなければならないのなら、同じ世にいられるうちは精一杯大切にしたい。

だからこのコーヒーを飲み終えたらもっと頑張ろう。
あの人のために、ももクロちゃんのために、自分のために。

そんな決意を込めて飲み干したコーヒーは、少しさみしいけれど、未来の味がした。