タキシード・ミラージュ

目の前に凛と立つ神々しいほど美しいしおりん

素顔の見えないメイクでも輝く笑顔のれにちゃん

百田夏菜子として圧倒的オーラを放つ夏菜

手負いながらも優しい眼差しで歌を届けるあーりん

可愛らしいツインテールを揺らしながら深いビブラートを響かせる杏果

ピアノのイントロ。心の奥底に今も揺蕩う大切な景色が蘇る。


2014年2月27日、MTV LIVE 2014 supported by SIDAX with LIVE DAM〜“美少女戦士セーラームーン”THE 20TH ANNIVERSARY MEMORIAL TRIBUTE~ 
に赴いた。
奇跡的に当選を果たしたZepp Tokyoでのライブだ。
MTVからの招待ハガキが届いたのがちょうど今通っている大学の合格発表と同じ日だったのだが、俄然招待ハガキの方に歓喜したのをよく覚えている。

3月15日の国立大会を控えつつ、受験後1年ぶりに会いに行くももクロちゃん、にして初のライブハウス現場。
何日も前からテンションが上がりすぎておかしくなりそうだった。

Chanでしか見たことのなかったZepp Tokyo
久々に見るカラフルな人々
国立で連番予定の友達と、淀んだ冬空の下、そわそわと語り合っていた。

整理番号は大して良くなかった。勝手もよく分からず、とにかく順番が来たら急いで会場に入った。すると最前ブロックの右側に案外まだ空きがある。
ステージのあまりの近さに目が眩み、最前ブロックへの挑戦を決めた。あの時の心拍数は恐ろしいほどのものだった。

いよいよ、ライブが始まった。
ステージ上に出てきたマントのおじさんが、近い!近すぎる!
まいんちゃんとしてずっと見ていた福原遥ちゃん、可愛い。突然出てきたなめこ、可愛い。曲に合わせてぴょんぴょん跳ねる「ぴょんぴょんぴょん」で地味に前に詰めていくモノノフ達。
しょこたん登場の圧縮に乗りグッと前へ出るモノノフ達。よく聞いていたアニソンに歓喜。熱い。顔がはっきり見える。可愛いすぎる。
堀江美都子さんをミッチー!と呼ぶモノノフ達。妙な団結感と高揚感の中、楽しく聴いていた。じりじり進みながら。
そしてマントのおじさんが最後の出演者の名を呼ぶ。


M O M O MOMOIRO CLOVER...

Zeppに響く魂の叫び
一気にドカンと圧縮が来た。一歩でも前に、一歩でも前に。通勤電車のような圧力。訳が分からないくらい力一杯叫んだけれど、自分の声が全然聞こえない。
気がつくと最前ブロックしおりん前の6列目くらいにはいたと思う。

鳴り止むoverture
ついに、ついに姿を現した最愛の5人

私は初めて至近距離でももクロちゃんを見た。

そこから先のことは、余りにも夢のようで判然としない。
けれど、とにかく目の前に立つ玉井詩織さんが、人間とは思えないほど美しかったことはかなりはっきり覚えている。
初めて間近で見る杏果のあまりの可愛さに失神しかけたことも。
骨折中のあーりんは頑張っていて可愛かったし、月野うさぎメイクを施したれにちゃんはそれでも可愛かったし、本物の夏菜子はとにかく可愛かった。
ももクロちゃんはこんなにも可愛いのかという衝撃だけは、ありありと胸に刻まれている。

1曲目、ずっと惚れ込んでいたムーンライト伝説はやはり素晴らしかった。推され隊・りんりんの美しいハモりと張り上げる夏菜子、作り込まれた滑らかなダンスに魅了される。

2曲目は、まさかの猛烈。イントロと共に猛烈なモッシュ。何度も何度も映像で見てきたダンスが目の前で繰り広げられている。歌はもちろんのこと、「星の子供が...」「僕は君のことを...」パートの後ろで4人が目を合わせながら踊るあの大好きなところが間近で見られて、感動が湧き上がった。

3曲目、まさかすぎるBelieve。死んだと思った。
のちに公開された映像でカットされたこともあり、もうほとんど記憶がない。死んでいたのかもしれない。
ただ、「ラップが凄かった!」という書き残しを発見したため、ももラップあやラップでぶち上がったことは想像出来る。

4曲目、フォーメーションを見て全身が叫んだ。まさか!一番大好きで一番思い入れのある、私の神的存在、ピンキージョーンズ
脳が絶頂していたと思う。
この頃には前から3、4列目くらいに詰められていた。連番相手とはとうにはぐれた。ペットボトルを落とした。正直前の人達の隙間からチラチラと見る感じで、時に隣の人の腕で耳が塞がれた。呼吸もままならない圧縮地獄。そこに響いた、今まで何度も何度も助けられてきたあのフレーズ

逆境こそがチャンスだぜぃ!

今ここにいる私がまさにそうだと思った。
極限状態で揉まれる、この逆境に飛び込んだからこそ、目の前の5人のきらめきを間近で拝めるのだと。
逆境こそがチャンスという言葉が、あれほど染み込んだことはない。

そして、ラスト1曲。
MCも挟んでいたが、たった5曲なのに結構長く感じた。一瞬が永遠のように。

このライブで初めて聴くためにあえて音源を聴かずにいた、タキシード・ミラージュ。
ライブハウスの最前線でバラードを堪能出来るなど、夢のようだった。
一人一人が丁寧に歌い上げる。みんなの表情が美しくて、みんなの歌声がしっとりと心を包み込む。しおりんが。れにちゃんが。夏菜子が。あーりんが。
そして

ナミダが星になっても
回転木馬きえても
おねがいよ キスを やめないで

目の前で杏果のバラードを聴く、夢にまで見た瞬間。
優しく紡がれる綺麗な情景、美しく切なげな表情、最後にしっかりと心を貫くビブラート。
感動だとか、そんな言葉じゃ言い表せない。何も言えない。幸福の極み。

あの感覚だけは忘れない。
あの日あの場所にいたことを忘れない。
私はずっといつまでもついていく。永遠にモノノフでいたい。
そうまで思わせたタキシード・ミラージュだった。


あの楽しく感動的だったセラムンライブから1年、月刊TAKAHASHIなる定期公演が始まった。
グリーンドームでの12月号は当たったもののZeppでの公演は当たらず、再びライブハウスで彼女達のライブを見ることは叶わなかった。
代わりに、映画館へよく通うようになった。

そんな中突然開催されたありやスクリーン。
杏果だけを映す、夢のライブビューイング。
あれから今日で一週間になる。

一面の緑の中で見えたのは、たくさんの可愛い杏果、かっこいい杏果。舞台裏も含めてとにかく杏果。笑顔も真剣な顔も後ろ姿も、杏果パラダイス。
と思ってウハウハしていたら、ありがとうのプレゼントと白い風の圧倒的な歌唱にノックアウトされる。そんなありやスクリーン。
最も期待していたロマンティックこんがらがってるが来て舞い上がったが、期待を遥かに超える可愛らしさでそのまま天にぶっ飛んだ。
アンコール中のメイク直しまで見せてくれた。ここでも可愛すぎだ。アンコールが短く感じられる。そしていよいよ、客席のカメラに戻る。ぃよっしゃももクロ!さあ次の曲!その矢先。

ピアノのイントロ。
絶対に忘れられない、あの綺麗な旋律。
ペンライトの動きを止めて、固まってしまった。
フォーク村では一度見たものの、ライブではあの日以来聴いていなかった思い出の曲。

5人の声が響く。杏果は綺麗な表情をしている。
それがどうにもこうにも、あの日見た杏果に重なった。
記憶が引きずり出されていく。間近で見つめる杏果は、確かにこんな感じだった。
映画館にいながらにして、ここがZeppであるかのような気分だった。

そして杏果がマイクを持つ。
初めて聴いたあの日とは違って、もう何度も何度も何十回何百回聴いた歌。
積み重なった思い出の深み、遥かに高められた歌唱力、それはあの日とは違うけれど。
それでも、あの日と同じ響きを自分の中に感じた。

ありやスクリーンは単に楽しいイベントだったり、杏果を見たい人向けのサービスというだけではなかったのだ。少なくとも私は大きな可能性を感じた。
杏果だけを映すという夢のような非現実を具現化する試み、でも本当はそれこそが現実のライブに最も近いライブビューイングなのではないか。
カメラがあちらこちらをランダムに映していくのではなく、目線の対象を固定してじっくり見続けさせてくれる。
それは、ライブハウスの最前で杏果を見ているかのような錯覚を生む映像。現場の擬似体験として通常LVよりリアルだと思った。
きっとそれは現場の特権であった景色だが、今や小箱のチケットなどは激戦でしかないももクロなのだから、たまにはこうして敗者にお裾分けされてもいいのではないかと思ってしまう。あーりん版の話も出たが、是非またやってほしい。

ともかく、図らずもあの日のZeppの追体験をした最後の曲が終わり呆然と浸っていると、なんとそのままライブが終了した。曲数は変わらないとはいえ、アンコール後が一曲という初めての試みに一瞬拍子抜けした。
けれど、あの余韻を掻き消されることなくライブが終わってくれたのはありがたかった。

ただ、アンコール後一曲はともかく、タキシード・ミラージュでライブが終わるというのはあの日と同じだ。

セトリを組んだあーりんは、歌った5人は、思い出してくれていただろうか。
タキシード・ミラージュを響かせた、あの日のZepp Tokyoを。