富士見へ緑を飾る

埼玉県が誇るスーパーアイドル杏果が、富士見市PR大使に任命された。その委嘱式の第2部として「幕が上がる」の上映会と杏果&平田オリザさんによる舞台挨拶が行われるということで、富士見市へ赴いた。というか奇跡的にチケットを譲って頂いた(本当にありがとう)。

東上線に揺られながら、こちらの方面には良い思い出しかないな~とニヤけた。杏果の故郷ふじみ野を訪問したこと。路線は違うけれど、春日部へ杏果の舞台挨拶を見に行ったこと。個人的には、友達とみずほ台なんかで遊んだこと。全部楽しい思い出だ。
今日もまた楽しい思い出にはなるのだろうけれど、春日部の時のように間近で見られる機会はないだろうなと、なんとなく思っていた。遠くに見える小さな杏果とオリザさんのお声を聞いて、満足してそそくさと帰る自分の姿が目に浮かんだ。

そうして初めて鶴瀬駅に降り立ち、ららぽーと富士見に初上陸しひとまず休憩。頃合いを見て会場の富士見市民文化会館キラリ☆ふじみへ向かった。
杏果がかつて利用していたという施設。幼き日の杏果を思い浮かべながら、綺麗な建物や池、公園を眺めた。5月になったばかりだというのに灼熱の陽気で、Tシャツがグショグショになる。でもこの待機列の先に杏果がいると思えば、なんてことはない。

ようやく開場し、列が動き始めた。自由席であるため入った瞬間に咄嗟の判断で動かなくてはならない。さあどうする・・・と思っていたが。
ホールに飛び込み、言葉を失った。
近い。
狭い。
想像の何倍も小さい会場で、けれども案外横幅はあったため前方が埋まる速度は遅く、かなり前方の空席に滑り込むことが出来た。
嘘でしょ。
予想外の近さに鳥肌が立った。そこに杏果が来るのか、と考えただけで死にそうになる。こんなに小さな箱で杏果を見ていいのか。春日部の舞台挨拶の時よりもずっと近い。

ドキドキしながら、まずは幕が上がるの上映に臨んだ。
杏ノフだらけの会場で幕を上げるのは春日部ぶりで、なんだか不思議な気持ちになった。すごく心地が良い。
私にとって幕が上がるは何十回観ても毎度毎度違うことを考えさせられる特殊な映画なのだが、今回もまた新たな解釈が出来た。が、今そこは重要ではないため書かない。

とにかく涙を流しつつ感動して観終えた。余韻が強すぎて、杏果を迎えるテンションではなかった。これから杏果が出てくるとは信じ難かった。
一旦市のPR動画を挟んで、ついに舞台挨拶が始まる。
オリザさんが登場された。
・・・
・・・
近っ!!!
初オリザさん、近い。はっきりお顔が見える。うわあ、オリザさんだ。
杏果も、杏果も来るのか、この距離に。杏果が。杏果!

そしてオリザさんの紹介を受け、下手から杏果が出てきた。
うわあああああああああああああああ
杏果だああああああああああああああ
あああああああああああああああああ

最近よく見るドームトレックの衣装(白ネクタイと半ズボンと黒い靴下の、アレ)で、二つ結びの杏果。
本当に。
心から。
可愛い。

そこにいるのに、そこにいるのが信じられない。緑の衣装に包まれた可愛い可愛い杏果。靴下に付いているリボンがキラキラと輝いている。
ああ、杏果だ。

早速オリザさんとのトークが始まった。まずは二人の富士見市との関わり。オリザさんはキラリ☆ふじみの芸術監督を務めていたことがあり、杏果は富士見市に住んでいたことがある。そんな二人が幕が上がるを通して偶然知り合い、こんな舞台挨拶まで実現したのだと言う。

ここで問題が勃発した。今回の舞台挨拶全編を通して笑いを取った、富士見市ふじみ野市かという問題だ。
富士見市はよく隣接するふじみ野市と間違えられるが、今回は富士見市のイベントであるため敵対するふじみ野市の事柄に触れてはならない。しかし杏果が富士見市に住んでいたのは小4の頃までだったため、そもそも自分がどちらに住んでいたのかも鮮明ではなく、最初にオリザさんと富士見の話になった時はママに電話して聞いたというレベルなのだそう。そのため富士見市PR大使になったにも関わらず、富士見市でいいんですよね?とオリザさんに疑われていた。
プライズで登場した鶴瀬出身の川上マネージャーも交え、客席の富士見市民の質問を受けたりしながら富士見市での思い出を語って下さったわけだが、杏果には富士見市の場所かふじみ野市の場所かという区別は難しいようで、地名を挙げる際に一旦オリザさんに耳打ちして確認する場面が何度かあった。それが・・・物凄く可愛かった。きちんと富士見市の地名を挙げられて客席からOKのサインを貰った時の喜びようも実に可愛かった。

ディープな富士見談議に非市民としては正直ポカーンとなる場面もあったが、「ああ!行ったことある!」「ああ~あった~」という風に懐かしの施設名に声を上げる杏果が楽しそうでとにかく可愛かった。私にとって唯一馴染み深かった「みずほ台」という単語を杏果が発した時には身を乗り出しそうになったが。
川上さんの行きつけの床屋さんが、昔杏果がオーディションやイベントの前に髪を整えに行っていたところだというエピソードなど、興味深い話も沢山あった。
質問コーナーでマイクを持って走る川上さんを「動けるデブ」と評したブラックな杏果も面白可愛かった。

そういうわけで、昔を振り返る杏果は可愛いな!昔の杏果を知れるのは面白いな!という舞台挨拶だったのだが、終盤に意外な展開が待っていた。
富士見市民からの質問コーナーで、最後にどうしてももう一人言わせてほしいと言って女性が立ったのだ。

覚えていますでしょうか、小学校の登校班で一緒だった○○と△△の母です。

これには会場も杏果も大変驚いた。
そのお母さんは「小学校の運動会で一人ずば抜けてキレキレのダンスを披露していた杏果が、今こうして活躍している姿を見て嬉しく思っていました、これからも応援します」といった旨を続けた。
運動会のダンスのくだりで照れて隠れようとする杏果はとてもとても可愛くて萌えたが、その時何故か涙が出てきた。周りは全然泣いていないのに泣くのはおかしいと思い耐えようとしたけれど、若干零れてしまった。思い込みかもしれないが杏果の目も潤んでいるように見えた。

昔を知っている人の元へ、大きくなった杏果が帰ってきた。育った地の大使として、立派になって戻ってきた。それを心から喜んでいる方がいる。ちゃんと見てくれている方がいる。
杏果にも、あのお母さんにも、本当に良かったねという気持ちで一杯になった。こんなことってあるんだ。良かったね、本当、良かったね。

あの会場は杏果が何度も驚くくらい沢山の杏ノフで埋まっていて、見渡す限りの緑が広がっていた。同じステージに立っていた幼い杏果には想像も出来なかった光景だろう。
小さい頃、富士見でのびやかに育ちつつ、様々な苦悩にもがき、未来の自分の姿など知らずに必死で頑張っていた女の子が、沢山の仲間を引き連れて帰ってきた。そんな彼女の人生の美しさ、シンデレラストーリーのヒロインのようなきらめきを、どこまでも愛しいと思った。

その上で、杏果はもっと綺麗なシナリオを書き足そうと決めていた。
来年もキラリ☆ふじみでイベントを出来るように頑張っていると川上さんが言った瞬間、
「歌いたいです」
とはっきり告げたのだ。音響の良いこのホールで歌いたい、と。
帰ってきたこの場所で、音楽を届けるという新たな夢を紡ぐ。
故郷へ錦を飾り、更なる錦を描く。
そんな彼女の姿を間近で見られただけで、今日来た甲斐がありすぎた。

そして楽しい時間はあっという間に終わりを迎える。
杏果は何度も嬉しそうに会場を見渡し、手を振り、可愛らしい笑顔を届け、写真撮影では可愛いぜーっと!を連発し、大好きですと言われたら「私も皆のこと大好きだよ」と返し、ブログ用の写真をせがみ、なんだかもう、本当にファンが好きなんだなと感じた。
「ここにいる皆さんは絶対7月3日来てください」と言い残し、最後まで可愛い笑顔で去っていった。

想像を遥かに超える可愛さと感動を摂取したため、終演後の多幸感が果てしなかった。好きだ。大好きだ。幸せだ。良かったね。そんなことがずーっと頭の中をぐるぐるぐるぐるしていた。
ぼやーっとした気分で会場を出ると、駐車場付近でモモノフが帰らずに留まっている。ここに来るのか、とピンと来て、とりあえず待った。
すると案外すぐに川上さんが出てきて、オリザさんも顔を覗かせた。
ちょっとドキドキする。

すると、ついにオシャレな私服の女性が姿を現した。一瞬分からなかったが紛れもなく杏果だ。ちょっと、あり得ないくらいに可愛い。
杏果は3方向くらいに散らばったモモノフの元へそれぞれ走って行って、笑顔で手を振り、記念写真に写っていた。私のいた方にも来てくれた。その時、まさに目の前に杏果がいた。
で、その杏果が・・・
びっくりするほど可愛かった。
もちろん先程までステージ上にいた杏果も可愛かったし、今まで間近で見た杏果も可愛かったし、本来であれば「やっぱり可愛い」ということになるのだろうが、今日のあの杏果は過去を凌駕する程の次元の違った可愛さを纏っていた。大勢のモモノフの前ではしゃぐような杏果・・・あんなに弾けた姿を生で見たのは初めてかもしれない。だからこそあんなに可愛かったのか。もうこの世のものとは思えない可愛さだったのだ。
杏果は車に乗り込み、開けられた窓から手を振りながら去っていった。と思ったらその先のポイントでもう一度モモノフに囲まれ、最後まで手を振って駆け抜けていった。地元の方がその光景を不思議そうに見ていたが、傍から見ればあの姿はまさしくスターそのものであったと思う。富士見を緑で染め上げるスーパースター。あの方が、有安杏果さんなんですと言って回りたかった。あれだけ愛されている人気者なんです、杏果は。

帰り道、私は幸せ以外の如何なる感情をも持てなかった。
杏果の人生という清らかな奇跡に、ファンとして携われることを心から誇りたいと思った。ありがたいと思った。杏果が生まれてきてくれたこと、同じ世に私が生まれてこれたこと、感謝してもしきれない。
これからも杏果を応援したいし、杏果の人生の輝きを追い続けたいし、私にとってそれは絶対に意味のある選択だと自信を持てる。
一方で、ほとんど同じだけ生きてきた自分の人生が輝いていないのは問題だ。だけれども、杏果がいれば頑張れると素直に思える。
杏果が好き、それだけで世界を変える。本当に好きなんだ。

まさか今日、こんなにも温かい気持ちになれるとは。あんなに近くで可愛さを堪能できるとは。ここまで最高の思い出を持って帰れるとは思っていなかった。春日部の帰り道にも似た幸せを噛みしめている。
永遠に、誰が何と言おうと、杏果が一番好きだ。
あと何度だろう、ありがとう杏色空。


☆杏果が通っていた床屋さん(多分)
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HMVに残してくれたサイン
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