パンフレットにコメントが載った話

好きな人が出した本に自分の言葉が載っている。


次のライブのパンフレットに今までのライブの様子を載せたいから現地のレポを書いてほしい!
という杏果ちゃんの要望を受け、自分が一番大切に想っているVol.1大阪公演初日のレポートを鬼のように書いた。

締め切りは翌日の夜。
おれに任せろ!と言わんばかりに、ツイッターにこもり、指定されたハッシュタグをつけて大量にレポートを呟いた。

ただ一番書きたかったことは140字では収まらなかったためブログのコメント欄に丁寧に書き込んだ。

とにかく杏果ちゃんの期待に応えたかった。
すごく申し訳なさそうに協力を依頼してくれた杏果ちゃんの役に立ちたかった。
いつもいつも杏果ちゃんに貰っている。貰いすぎているほど貰っている。こんな時にしか返せないのだからしっかり返したい。

あとは単純に、杏果ちゃんがパンフレットの編集作業で相当追い込まれているような雰囲気を感じたため、こちらも動かずにはいられなかった。

大阪公演の直後に書いた自分の日記とツイートを見ながら、杏果ちゃんの要望に沿うようなコメントを手当たり次第繰り出した。
杏果ちゃんがほぼ確実に見てくれると頭では分かっていても、実感はなかった。

私も、私のタイムラインの方々も、ギリギリまでライティングを続け、ついに締め切りの時間が過ぎた。
これだけ書けばひとつくらい採用されるだろうな〜と期待しつつも、本気ではなかった。

あれから一ヶ月弱経った。
杏果ちゃんは怒涛の編集作業を無事乗り切ったのだと思う。HMVの売り場にパンフレットが置いてあった。

杏果ちゃんは今日仙台でライブをしていて、その会場でパンフレットを発売したわけだけれど、仙台にいない私のような民のために全国のHMVでも今日から買えるようにしてくれていた。

優しい心遣いに感謝しながら早速ページを捲る。
最初の1ページからため息がでる。これが杏果ちゃんの作りたかった本。

豪華な誌面を読み進め、ライブレポートのブロックに差し掛かる。
まずは横浜アリーナの特集。
記者のレポートがあり、写真があり、関係者のコメントがあり・・・ここでついに、あのファンコメントのコーナーの実物を目にした。

もっと乱雑に文字が詰め込まれているのかと思いきや、案外少ない。一つ一つが枠で囲まれ、匿名コメントの割にはかなり丁寧に扱われている印象を受ける。

思わず緊張した。
私も一応二つほど横アリのコメントを書いていた。

だがそれを探す前に、私がツイッターでフォローしている方のコメントが目に飛び込んできた。記名は無くとも、感銘を受けた文章だから覚えている。
それが杏果ちゃんに届いている。届いている証拠がこの紙面だ。ちょっと・・・泣きそうになってしまった。

結局私のコメントは横アリのページにはなかった。
大阪のページまで読み飛ばして確認したくなってしまったが、グッとこらえて順番に読んだ。
横アリの次は、大分、名古屋、そして。

そもそも大阪公演の写真を見ることすら緊張した。あの夜のあの衣装のあの杏果ちゃんの写真はまだ見たことがなかった。
意を決して見た大阪の杏果ちゃんは・・・それはそれは美しくて、あの日の杏果ちゃんで。
これは確かに私が観に行った公演の記事なのだと思うと手が震えた。

次のページに私のコメントがあるかもしれないし、ないかもしれない。

どちらかといえば自信はあった。でもショックを受けるのも嫌だからなるべく期待しないよう努めた。
期待と不安。
もう勢い良く開いた。


あった。


真っ先に目に飛び込んで来た。
一ヶ月ほど前に書いた文章だけれど、自分のものだとはっきり分かる。はっきり覚えている。なにより内容が自分の感想そのものだった。
それが、唯一杏果ちゃんのブログのコメント欄に書いたあの渾身の文章だった。

よく見ると驚いたことにもう一つ採用されていた。
ツイッターに上げたコメントだった。そちらも良く覚えている。

私は・・・息が出来なくなりそうだった。
その活字をこの目で見たら、あらゆる感情が渦巻いて止まらなくなった。

杏果ちゃんは確実に私の文章を読んでいる。
そもそも杏果ちゃんが選んで載せている。
私の文章が杏果ちゃんの目に止まり、杏果ちゃんの手によって、杏果ちゃん名義の出版物の1ページに掲載された。
自分の文章がたった数行とはいえ印刷されている本がHMVで売られているという、夢のような現象を杏果ちゃんが叶えてくれた。
ほんのちょっとでも、パンフレットを作る杏果ちゃんの役に立てた。
あの大阪初日、7月1日の大切な大切な気持ちが杏果ちゃんに届いた。
てのひらからすり抜けていくようで、必死に記憶の中で守っていた私の7月1日は紛れもなく現実だったと杏果ちゃん自身に認めてもらえた。
杏果ちゃんはブログのコメント欄やツイッターを本当の本当に見ている。
杏果ちゃんは実在している人間。
杏果ちゃんと私は交わっている。
遠くにいるトップアイドルだけれど、距離なんかない。
この想いは届いている。


私はもうそれだけで生きていける。


そう強く思った。凄まじい衝撃の中に、沁み入るものがあった。
泣きはしなかった。涙すら硬直して、しばらく動けなくなった。

もう・・・
杏果ちゃんが好きだ。杏果ちゃんにはかなわない。
こんなに粋なやり方で、こんなに壮大な希望をくれるのは、杏果ちゃんしかいないと思った。
ファンのみんなと一緒にパンフレットを作りたい!という、少し無茶とも言える企画を実行してみせた杏果ちゃんは、こんな私のような反応まで想定してくれていたんだろうか。
杏果ちゃんが意図したにせよ、しなかったにせよ、私はとんでもなく希望をもらった。
もう絶対に返しきれないくらい大きな希望を。
また貰ってしまった。


その後のページもしっかりと読んだ。
圧倒的なセンスと偽りのない真心で満たされていた。
最初から最後まで家宝だ。

このパンフレット・・・ココロノートを開けば、私はいつでもヒカリを貰えるような気がする。
だって7月1日は此処にある。私と杏果ちゃんを結ぶ糸は此処にある。
こんなにも現実味を帯びた絆を感じられること、贅沢だと思う。

本当に嬉しい。本当に本当に嬉しい。なんだか分からないけれどこんなに嬉しいことない。
杏果ちゃんありがとう。
杏果ちゃんに出会えて嬉しい。
まだまだもっと生きていようと何度でも思わせてくれる杏果ちゃんが好き。

でもいつか死ぬ時は、結構本気で、私の棺桶にこの本を入れてもらいたいと願うよ。