富士見へ緑を飾る〜富士見市PR大使トークイベント〜

富士見市PR大使トークイベントに行ってきた。

だいぶ前から決まっていたこのイベント、杏果も参加するらしいと噂で聞いた日から長いこと楽しみにしてきた。
昨年5月1日に同じ「キラリ☆ふじみ」でPR大使委嘱式が行われ、私はその第2部となる「幕が上がる」トークショーに参加した。杏果の過去と今を繋ぐような非常に素敵なイベントで、あれは忘れられない。

あの日ぶりのキラリ☆ふじみ、どこか神聖な気持ちで足を踏み入れた。
まずはPR大使写真展で大使の方々が撮った富士見市の写真を鑑賞。どなたの写真も愛に溢れていて素敵だった。
杏果が撮った作品はあいにく無いのだけれど、代わりに富士見市を訪問したときの杏果&れにちゃんの写真と、今年4月に富士見市で行われたももクロ春の一大事の写真がたくさん展示されていた。

埋め尽くされる客席の写真、幻想的なペンライトの写真、ウエディングドレス衣装での「『Z』の誓い」の最後のZポーズの写真、ももクロの集合写真など素晴らしい写真が並んでいた。おそらく富士見市占有の写真で、私はほとんど見たことがなかった。
展示の最後の方、ライブ中の杏果にフォーカスを当てた写真が何点か並んでいてそれがすごく良かった。ニュースサイトでもファンクラブのフォトリポでもライブパンフレットでも、なかなかああいう写真群を見ることはない。ももクロのライブを写した写真なのだけれどどれもこれも杏果が主役になっているのだ。
ももクロのライブで輝く杏果は美しい。まるで我々杏果推しの目線で世界が切り取られているようで感動した。

写真の鑑賞を終え、トークイベントが行われるホールに入場した。「近!」「狭!」と驚く声が聞こえてくる。四日前にももクロを見たさいたまスーパーアリーナの感覚が残っているため、確かに信じられないほど小さく思えた。
あの日と変わらない綺麗なホールを眺めながら始まりを待った。ここで歌いたいと言った杏果を思い出す。やはりここで歌を聴きたいと思い、アンケートの「今後やってほしいイベント」欄に書いておいた。

ついにブザーが鳴り、照明が落ちる。ホールを埋め尽くす人々の視線がステージに注がれた。
まず登場したのはお馴染み山本昇さん。初っ端からガンガン飛ばして面白い。
なんといきなり一人ゲストを呼ぶという。オープニングイベントということでもしかしたらと思ってはいたが、本当にももいろクローバーZ有安杏果さんが呼ばれた。
心の準備が間に合わない中、ステージ袖から登場したのは紛れもなく本物の杏果だった。本当にそこにいる。春の一大事で着ていた笑顔をモチーフにした衣装がキラッキラキラッキラ輝いて眩しいくらいで、もうそれだけで泣きそうになる。ももクリから四日ぶりに会えたわけだけれど、アリーナとは全く違う距離感だからもっと切実に「会えた」気がして嬉しさと安心感が込み上げた。

杏果も登場したところで、春の一大事の映像を見ることになった。以前「幕が上がる」を上映した立派なスクリーンだ。機材トラブルなのかしばらく再生されなかったのだが、二人が自然に楽しく間を持たせていて流石だった。
Day1の市長の宣言・overture・words of the mindを見ながら二人がコメントしていく。普段自分の映像は恥ずかしいから一人で見るという杏果は照れながらも色々な話を聞かせてくれた。スカートについている桜の飾りは直前まで作っていたからリハの時は三つくらいしかなかったとか、富士見市で手袋をはめるのは気持ち良かったとか。
会場の前方ブロックは富士見市民の枠で、モノノフではなさそうな方々もかなりいる。場内には市の関係者もいるだろうし、他のゲストのファンもいる。そんな中でももクロのライブ、しかもワーズの鑑賞会が行われている。ささやかな規模かもしれないが、モノノフなら誰もが夢見るシチュエーションが叶っていた。

髪の長い杏果が、杏果推し的にはワーズ最大の見せ場であるBメロを歌い上げる。1番のBメロは昇さんが話し始めて遮られたが、2番のBメロでは二人とも黙って画面を見つめていた。
(※イメージ図)

鋭い目つきで堂々と歌を響かせる杏果が大きなスクリーンに映し出されている。その下に小さな杏果がいて過去の自分を見上げている。
髪の長さも纏うオーラも全く違う二人は別人だとしか思えなくて不思議だったけれど、同一人物だと分かっているからこそ妙に胸を打たれる光景だった。小さな杏果は大きな杏果を見ながら何を想っていたのか。
そしてこの時“なにも染まらない二人のcrystal light”の完璧なビブラートがキラリ☆ふじみに響いたことが嬉しくて誇らしくて仕方がなかった。

贅沢な鑑賞会が終わり、市のPRイベントに移行した。

トップバッターを務めるのはキッズダンサーのひまわりキッズ。なんとそのチームの先生は杏果が昔ダンスを教わっていた先生で、ついさっき舞台袖にて再会を果たしたのだそう。しかも当時の杏果もこの舞台で踊ったのだ。いくら杏果でも出来すぎている。呆れるほどの物語性に早くも泣きそうになった。
杏果はキッズダンサーのために「盛り上がる準備できてる!?」\イエーイ!/「そんなもんじゃないでしょ!盛り上がる準備できてる!?」\イエーイ!!!/という感じで会場を煽ってからステージを去った。本当に優しい人だ。

キッズダンサーという響きだけで昔の杏果を重ねてしまうのに、当時の杏果と同じ人に教わり同じ舞台に立つ子達だなんて、もう、昔の杏果がそこにいるも同然だった。
深すぎる感慨に耽りながらも、まあそれはそれとして目の前のダンサーたちのダンスを楽しんだ。

でも見つけてしまった。

会場の隅に凛と佇み、まっすぐステージを見つめる人がいた。
微笑みながらダンスを眺め、うんうんと小さく頷くような姿を見て涙を堪え切れなくなった。
杏果から受け継がれたバトンを手にする子供たちを、杏果が見守っている。あまりにも美しい光景だった。
かつてあの子たちと同じ緊張を味わい、同じように踊り、同じ景色を見ていた。そんな杏果がひまわりキッズを見ながら抱いていた気持ちは、どんな気持ちであったにせよ、キラリ☆ふじみで踊る幼い杏果にも遠く響くようにして届いたんじゃないかと思う。

ひまわりキッズのダンスは、年齢が近い数人ずつの組に分かれて四曲披露されたがどこも良かった。目を惹く子はやはりいるのだが全体を楽しめた。女の子が多い中で男の子も輝いているのが印象的だった。杏果は三曲目まで見届けて静かに会場を去った。
その後、空手の小杉さんが静寂と緊迫感の中で圧巻の形を魅せ、よさこいの勇舞会さんが迫力ある和の世界を作り上げた。モノノフだらけの会場だから桃神祭や夏バカの気分になりつつ、とても引き込まれた。人間の動作に宿る生命は気高い輝きを放つ。素晴らしいものを見せてもらった。

休憩を挟み、第2部のPR大使トークイベントが始まった。司会は再び昇さんだ。
我らが杏果さん、芸人の板倉さん、プロ野球選手の今成さん、気象キャスターの千種さん、平田のオリザさんという順で、昇さんに紹介されながら五人が登場した。
昇さんが杏果を「女優としても活躍が知られる...」と紹介した際笑いが起きていた。オリザさんの存在で幕が上がるの文脈が強い場だから間違ってはいないけれど、音楽以外が挙がると想定外すぎて笑えてしまう。

まずは順々に自己紹介をしていく。
杏果は、委嘱式ではいなかったメンバーもそろって嬉しいと喜びつつ「普段メンバー五人で一緒なので今日は一人で心細いんですけど・・・」と洩らした。すかさず板倉さんが「今日も五人いるよ」とグループを結成すると杏果は「心強い」と言い直して笑った。かわいい。
登場も自己紹介も杏果が最初であったことに板倉さんは「やりづらいから最後にしてくれませんかね!?」とぼやいていた。そんな板倉さんは自己紹介ということを忘れておそらくは次のコーナーで言うはずだった富士見市の好きなところを語ってしまい杏果に大笑いされていた。板倉さんは登場した瞬間から面白かったけれど杏果との相性も良さそうで、この五人組の行く末が俄然楽しみになった。

また、杏果の横には書記の方の手元を中継したモニターがあり、板倉さんの発言が文字で書き残されていく面白さを杏果が指摘すると爆笑が起こった。杏果はその後もずっとモニターを気にしており、このくだりは度々笑いを誘うものになるのだが、笑いを引き出しつつ書記の方にもスポットを当てた杏果は良い人だと思う。

このトークイベントはいくつかの企画を設けて進められるようで、最初は富士見市の好きなところをアピールするコーナーになった。板倉さんは頭を抱えていた。
舞台中央に立って一人ずつスピーチをするのだが、なかなか順番が決まらない。言うことがなくなりそうな最後は避けたいという雰囲気の中、板倉さんは半分ボケのような感じで杏果に最後を押し付けようとした。登場と自己紹介で二回最初だったから、と。
しかし杏果は一瞬ためらうポーズを見せてから快諾した。やります!最後で大丈夫です!と笑顔を見せる杏果に皆が驚く。あの時の杏果の頼もしさは凄かった。かっこいい・・・と声が漏れそうになるくらい、我々の姫は勇ましかった。

シュッとしてるから、という理由でトップバッターに選ばれた千種さんは、富士見市からは富士山が見えるだけでなく空を広く見渡せるのが良いと語った。雲や星や虹色現象のことを熱心に語り、結局空についてのPRのようになり面白かった。
続く板倉さんはもう言うことがない中、東京に住んでも結局サバイバルゲーム富士見市に来るから結局富士見市に住んでいた方がいいと苦し紛れに語った。
3番今成選手はあまり思いつかなかったのか、空も見えるし・・・サバゲーも出来るし・・・と二人の発言を拝借していて面白かった。
オリザさんはあくまでコメンテーターということで、次はいよいよ杏果だ。なんとなくボケが三回続いたような格好になりゆるい雰囲気が漂う中、マイクスタンドの前に立つ。

杏果が話し始めた瞬間、スッと空気が変わった。ボケの連鎖に呑まれることなく、杏果らしい自然な話し方で杏果のターンに切り替えていた。親しい人に語りかけるような“ももかたり”の雰囲気でニコニコ話す杏果は多分皆の心をキュンとあたためていた。
昔の自分にはサティが全てだったけれど、今はららぽーとがある。東京へ行くには東武東上線で池袋に出なければ話が始まらなかったけれど、今は副都心線で便利に移動できる。空も富士山も見えて、住むのに良い街だけれど、これからはもっと“遊びに来る街”になってほしい。いろんな施設が出来て、もっと富士見市の魅力を知ってもらえたら・・・と、最後は未来への願いで締めた杏果は誰がどう見ても立派なPR大使だった。
最年少の杏果が一番まともに話して流れををまとめたことに皆さん驚いていた。杏果はまるであの舞台の座長のようだった。客席の大半が自分のファンである状況は普通やりづらさもあるはずだけれど、動じることなく堂々と振る舞う杏果は本当にかっこよかった。

とはいえコメンテーターのオリザさんは、総じてPRするところがないという結論を出し苦笑いしていた。板倉さんは、なにもないからこそ他県民と争わない雰囲気が富士見市民や埼玉県民にはあって好きだと言い、私は埼玉県民として共感できて嬉しかった。

昇さんがマイクスタンドを片付け、富士見市で過ごした小中学生時代の思い出を語るコーナーに入った。最初に話すのが杏果か板倉さんかでじゃんけんをして板倉さんが勝ったものの、勝った方が先なのか後なのか決めてなかった!と焦る杏果に笑いが起こった。勝ったから選んでください!と言われて板倉さんは先を選んだのだが、このコンビのやり取りには妙な面白さがありハマる。
板倉さんが強烈な爆笑武勇伝を披露したあと、杏果は富士見市に住んでいた小学四年生までの思い出を語った。学校と家が近すぎて寄り道のしようがなく、駄菓子屋さんなどに寄り道することに憧れていたと言う。近所のエアロビやダンスのスタジオに三つ通い、家にランドセルを置いたらすぐオーディションやレッスンへ向かう毎日。駅ビルの文房具店「フィガロ」が好きで、ママに欲しい文房具を見せると「今度のオーディションに受かったらね」と言われて「頑張ろう!」という気持ちになったそうだ。心温まるエピソードに昇さんが拍手を煽った。杏果の富士見時代の話は色々聞いていたけれど、これは初めて聞く話で嬉しかった。

千種さんと今成さんは同級生時代のエピソードを明かした。このコンビも面白い。
オリザさんは、このキラリ☆ふじみを作ったことで富士見市は子供たちにとって良い環境になった、と言う。オリザさんがいなければ幼い杏果の表現の場も限られていたかもしれないと思うとオリザさん万歳だ。

続いて行われたのは、富士見市の場所やものをジェスチャーで伝えるゲーム。オリザさんがいることでオーディションのような空気になりながらも、各自思い思いのジェスチャーで思い出の場所を伝えた。
今成さんは延々と続く見事なお芝居でららぽーとを伝え、千種さんは地元のお客さんにはすぐ分かるようなジェスチャー貝塚公園を表し、板倉さんはむさし野緑地公園を演じたものの「SL広場みたいなやつ」と曖昧に当てた千種さんにモヤっとした様子を見せて笑いを巻き起こした。
トリは杏果だ。杏果が立つ。かわいい。始まりに手間取って笑いながら仕切り直す。かわいい。どこかに足を踏み入れる。かわいい。しゃがんでどこかを眺め、なにかを指差して選ぶ。ここでああ〜と声が上がったけれど私はかわいさに見惚れており分からなかった。なにかを受け取り、どこかへ向かう。なにか包みを開けるような動作をし、ニコニコしながら食べ始めた。かわいい。そこでやっと分かったけれど、杏果の思い出のケーキ屋さん「ブールセック」だ。
舞台上では昇さんしか知らないであろうお店をあの場で選ぶのは予想外だったけれど、自分にとっての富士見市の名所を素直に選んで表現した杏果は良いなあ〜と思う。「勝ちに来ました」という、モノノフとの連帯感を誇るような言葉も嬉しかった。
いちごのタルトをママと半分こして食べていたお話は久々に聞いたけれど胸に来るものがある。あのタルトは何度か食べたがとても小さくてかわいらしいサイズなのだ。

続いてのトークテーマは、富士見市を出た今だから思う富士見市の良いところ、だ。これが最後のコーナーになった。
板倉さんは、東京にはサバゲーの道具を塗装するスペースがない(からルミネの屋上で美術さんに紛れてやっている)けれどここにはあると羨ましがって笑いを誘い、千種さんは東武東上線の車窓から見える富士山の美しさを挙げ、今成さんは空気入れをタダでやってくれる近所の自転車屋をおすすめしていた。

杏果は、東京では欲しいものがすぐ手に入ると言う。富士見市に住んでいた頃は、たまごっちが発売しても流通量が少なくて全然買えないような状況だったらしい。
けれども、欲しいものがなかなか手に入らないからこそ、手に入れたものを大切にできるのだと杏果は言った。お母さんお父さんの負担も減るし教育に良い!と笑ってまとめていたけれど、杏果の言葉はジンと響いた。
高価な楽器やカメラ、プレゼントや記念の品だけでなく、ちょっとした小物や、些細なものごとや、思い出、人、景色、感情、日付に至るまでなにもかもを大切にする有安杏果という人が「なかなか手に入らないからこそ大切にできる」と教えてくれるのは非常に重みがある。
ひとつの文房具を買ってもらうためにがんばったこと、ご褒美のいちごタルトを半分こして食べたこと、東京と違っておもちゃが簡単に手に入らなかったこと、むしろそれらがルーツとなって杏果の丁寧な気質が育まれたのかもしれない。
大切なものを増やしながら歩んできた道の果て、杏果はPR大使としてふるさとに帰ってきた。そこで伝えられた杏果の言葉を大切に覚えておきたい。
また、三人の挙げたスポットは写真を撮るのにもピッタリ!と、杏果らしい視点で流れをまとめたのも見事だった。

イベントは終わりに近づき、客席から質問を受け付けることになった。
前回の「幕が上がる」トークショーでは杏果の小学校の同級生のお母さんが手を挙げ、当時運動会のダンスで輝いていた杏果の現在の飛躍ぶりを喜ぶという感動の場面があった。
今回はどうなるかと思っていたら、いきなり板倉さんが「彼のことはちょっと・・・」と謹慎中の相方に触れ、ブラックな笑いを起こした。
実際に受け付けられた質問は「夢を叶えるにはどうしたらいいか」。モノノフさんなのだろうか、杏果にぴったりな質問でドキッとした。
気象キャスターの千種さんは、自分が今できることよりも少し上のタスクをコツコツこなして積み重ねていく、という旨を語り、野球選手の今成さんは「なりたい」ではなく「なる」と言えばそこから逆算してやることが見えてくると言った。
インパルスの板倉さんは、芸人になりたいという思いを持ったままではテレビを見ても素直に楽しめなくなると思い、後悔しないためにお笑いをやってみたらこんな感じになった(上手くいった、成功したとは頑なに言わないのが面白かった)のだと言う。また、野球選手や総理大臣のような大きな夢だけが夢であるかのような風潮が人々を苦しめているのであり、飼いたい犬種や乗りたい車を夢として掲げればいいと語る。そのような夢から逆算すればやるべきことが分かり、努力ができる。
でも、積み上げた努力は一瞬で消えてしまう!積み重ねたトランプタワーのように脆く崩れてしまう!そんな板倉さんの魂の叫びがこれまでの流れをひっくり返し、場内が異様な笑いに包まれた。

笑いの余韻が残る中、この後はやりづらい、どうしようと杏果は笑った。客席のモノノフ全員が知っている通り、杏果は「努力は裏切らない」の象徴的存在だ。
どう切り出すのかと思っていたら、杏果は「私は努力は裏切らないと思ってやってきたので・・・そういう人生もあるんだなあって」と素直な感想を口にし、大爆笑を巻き起こした。
とはいえ気を取り直し、ブレない想いを杏果らしく語ってくれた。夢を叶えるためには、信念を持って努力を重ねること。目の前にある小さな目標を一つずつ超えていったら、叶えたかった夢に辿り着くはず。杏果が身を以て実践してきたことをまっすぐ伝えてくれた。

そしてもう一つ大切なことを教えてくれた。この日一番私の心に沁みたメッセージだ。
それは、自分の夢を、自分のやっていることを好きになることがなによりも大事だ、ということ。本当に自分が好きだと思ってやっていることじゃないと、お客さんには伝わらない。例えば服も、本当に好きで良いと思ってデザインしたものだからこそ、誰かに良いな好きだなと思ってもらえる。だから自分の作るもの、やっていることを好きになるのが一番。杏果はやさしく微笑みながら語った。
いやもう、涙が出そうだった。私が杏果の作るもの魅せるものを好きだと思えるのは、そこに杏果自身の「好き」が込められているからだよ。
あれだけ自分の音楽を愛する人が、自分の仕事を好きになることの大切さを真摯に伝えてくれたら、もう“分かる”しかない。お客さんへのアンサーとして、自分の人生から湧き出た一番大切なメッセージを堂々と放つ杏果、かっこよすぎる。どうしてあんなにも心に残る言葉を紡げるのだろう。どうか未来の私もあの時の杏果の声を忘れないでほしい。

質問コーナーが終わり、一人ずつ最後の挨拶をすることになった。本当にあっという間だ。
千種さんは、いつもは原稿を読む仕事だからフリートークは難しかったけれど、聞き手として一緒に楽しませてもらったと笑顔で言った。今成さんは、なかなか帰って来られないけれど、野球で活躍することが富士見市への貢献になると強く語った。イベントを通して自虐的な発言が印象的だった板倉さんも、まだまだ終わらない、這い上がると宣言し場内を沸かせた。声援を受けた板倉さんは「今日すごい思ったけどアイドルのファンっていいヤツだよね」と言ってくれたけれど、モノノフこそ「板倉さんっていいヤツだよね」と思ったに違いない。私は大好きになった。
杏果は前回いなかった板倉さんとの共演を喜び、実は本番前に板倉さんのマイクが緑で杏果のマイクがオレンジだったのを交換してもらったのだと明かした。板倉さんによれば、ファンの人に射殺されると思ったらしい。
杏果は、ふるさとは帰るとあったかい気持ちになる場所だから、富士見市以外でも皆それぞれのふるさとを大切にしてください!と、素晴らしい言葉を届けてくれた。
オリザさんは、富士見市のアピールポイントは結局ないけれどこの素晴らしい人たちが魅力なのだと結論を出した。

その後、客席を背景にした写真撮影が行われた。杏果がセンターに移り、「富士見市大好きだーZ!」の掛け声でZポーズの写真を撮る。千種さんと板倉さんに挟まれて立つ杏果はとても小さく見えて、あの頼もしい杏果はそういえばこんなに小さい人だったのか、と不思議な愛おしさが湧いた。途中で昇さんと市長が加わり、市長は迫力の市長ボイスで「富士見市大好きだーZ!」を叫んでくれた。

最後は幕が降りてくるまで、皆で手を振ってくれた。楽しかっただけに別れはとてつもなく惜しかったけれど、杏果は幕が降りきるギリギリまで身を屈めて笑顔を見せてくれた。

温かな余韻と少しの寂しさを残してホールを後にし、キラリ☆ふじみを出た。信じられないほどスッキリとした清々しい気分だった。と同時にホワホワと幸福に満たされていた。
そんな私の心地も、目に映る空の美しさも、去年の5月1日のトークショーの後とそっくりで驚いた。
夕暮れ空が色を変えていく様はとても綺麗で、「心の旋律」の「もうすぐ空はピンク色」「変幻自在な空に憧れ」という歌詞がぴったりだった。
そして千種さんの「富士見市は空を広く見渡せる場所が多くて好き」という言葉を思い出し、こういうことか、と思った。

本当に、楽しくて温かい最高のイベントだった。想像を遥かに超える面白さで、たくさん笑った。出演者全員が好きになり、富士見市のこともますます好きになった。

杏果は最初から最後までかわいくて愛嬌があった。キラリ☆ふじみの名を象徴するように衣装が終始きらめいていた。イベントの途中、あえなく会場を出ていくモノノフさんに気づいて小さく手を振っていた杏果の「ありがとう」という表情が忘れられない。
なにより彼女の素晴らしい活躍に心を打たれた。
コーナーは事前に知らされていたようだが、やはり杏果は準備が出来る仕事ではずば抜けた成果を出す人だ。共演者が何度も驚いたように、常にしっかりと芯のある言葉を放ち場をまとめていた。杏果は今回の五人組における百田夏菜子だった。
でもそれだけでなく、杏果はコーナーの発言以外の時間もずっとファインプレー連発で楽しませてくれた。他の人へのツッコミやかけあいやちょっとしたコメントなどなど、とにかく存在感がすごい。大人数での即興トークといえば杏果の苦手分野として知られていたはずだが、本当に本当に成長されたのだと思う。
あの質問返しも即興なのにココロノセンリツのトークのような厚みがあった。それはタレント性を超えて杏果の人格が成せる業だけれど、ココロノセンリツで大きな会場に立って話した経験は確実に生きていると思う。
今回は、司会がいつもの山本昇さんで、いつもの平田オリザさんもいて、場のキーマンとなる芸人の板倉さんがとにかく上手で、千種さんも今成さんも優しくして、ソロ仕事とはいえ杏果が最大限リラックスできる場だったことも大きい。それに、富士見市で幼少期を過ごした人たちの中で富士見市トークをするのは楽しかったと思う。関西弁でマイペースに話す杏果らしい杏果がああいう公的な場で見られるのはすごく嬉しかった。

このトークイベントは杏果の仕事として大いに評価されてほしい。あの場に川上さんがいて本当に良かった。
一方で、そういうタレントとしての評価など小さく思えるくらい、杏果の人生の美しさを全身に浴びた一日だった。
杏果が富士見市を通して紡いでいくストーリーが本当に好きだ。自分の足跡を愛おしむように辿る杏果が好きだ。過去を輝かせる、というか、過去をあたためる杏果の生き様が好きだ。
どこまでも透き通る杏果の物語に触れるたび、心が浄化される。温かなものが溢れる。杏果を好きになれた自分を誇らしく思う。決して追いつけないけれど好きでいたいと思う。

この気持ちを何度も感じてきた富士見市という場所も、もう自分のふるさとのように好きになってしまった。
PR大使の任期が終わることを考えたら今から寂しくてたまらない。またあのメンバーのトークを見たい、杏果と富士見市で会いたい。
でも、杏果がPR大使ではなくなっても私は何度でも富士見市へ遊びに行く。

ふじみ野駅への帰り道、杏果が作詞した曲を聴くといつもと違った響きを感じてたまらない気持ちになった。特に「ハムスター」の2番でハッとした。

時は流れひとつふたつ記憶が
にじんで拡がる
心のキャンパスの上で
混ざり合って異色な色が巡る
主張し続ける
ほら抽象画みたいに

誰かの目をひくわけじゃないけど
自分しか出せない色がそこにはある

これを書いた杏果の気持ちが以前よりも分かった気がした。

ふじみ野駅に着き、電車に乗る前に杏果が好きだったという「フィガロ」に寄った。
小さくてかわいい文房具屋さんだった。幼い杏果がここで文房具を選んでいたのだと思うと愛しさが溢れた。ここもまた来たい。

2017年12月17日、本当に良い一日だった。人生最良の一日群に入る。
ただ一点だけ曇りはあった。開場前、つけてきたはずの「ハートでつながるブレスレット」をなくしたことに気付いたのだ。ベルトが緩いから注意していたはずなのに、何もない手首を触った瞬間頭が真っ白になった。

杏果だけとつながるハート。一つしか持っていない。もう買えない。その上、ココロノセンリツVol.1大阪で購入し、忘れられない7月1日を一緒に過ごした相棒だったと気付き絶望した。
一旦落ち着いて考えてみるとわずかに思い当たる場所があった。一縷の望みをかけて電話をしたが夜にならないと問い合わせられないということで、不安を抱えたままトークイベントを観ることになった。もちろんブレスレットより杏果自身の方が大切で、イベントの間はひたすら楽しく過ごせた。
ふじみ野から帰り、再び電話をかけた。祈るような気持ちで「茶色いベルトで、シルバーの飾りで・・・」と伝えた。
すると電話先のお姉さんが言った。
「ハートの半分みたいな形ですか?」

なくしかけていた心は、杏果と出会うことで取り戻された。