メモ

こんなに苦しいのは7月2日ぶりだろうか。幕が上がるの舞台を観た翌日にも似ている。脳が真っ白になって、ぐちゃぐちゃになって、なにをどうすればいいか分からない。でも逃げずに、気を紛らわすことなくこの苦しみを味わい尽くす。薄れてしまう前に。こうしている間にも記憶はどんどん遠のいていく。黒いワンピース、緑の傘、光に照らされる指先。思い出そうとすればするほど思い出せなくなっていく。でも私はそこにいて、私の目はそれを捉えていた。呼吸がおかしくなったこと、動けなくなったこと、もう帰ろうかと思ったこと、帰りの電車で延々と一曲を聴いていたこと、そういう私の身体に起きたことは覚えている。感想とか気持ちとか形のある感触はないけれど、一切言語化できない領域だけれど、でもまだ分かっている。感じている。それが全てだ。今はそれを感じ続ける。今まで見た何よりも、どんなステージ、どんな芸術、どんな景色よりも美しかった。もうオタクなんてやめたい。何もかもどうでもいい。元日がどうした。新年がどうした。私の過去は全部消えてしまって真っさらな土地に立たされているような気分だ。或いは深い森の入り口に置き去りにされたような。何も分からない。この文章も嘘に見える。どうすればいい?